1.学習とは何か
「動物(人間を含む)の個体が、特定の環境条件に合わせて行動パターンを獲得した
り変形させたりすること」
例)
犬が「オスワリ」の一言でおとなしくなる
→餌をもらえるなど、必ずいいことがあることを学習した結果
小鳥が人間の手や肩にとまって餌をねだる
→人間は危険でないので逃げなくてもいいこと、餌や保護などを提供してくれることを
学習した結果
池のコイや水槽の熱帯魚が、人影が見えると水面に集まってくる
→まもなく水面に餌が落ちてくることを学習した結果(「条件づけ」)
2.生得的な行動と学習行動
(1)生得的な行動: 生まれつき持っている行動
- 本能行動
- 種による生得的なコミュニケーション
(2)学習行動: 経験によって得る行動→ただし、学習能力には限界がある
- 慣れ(馴化)
刺激に繰り返しさらされることで、その刺激に慣れ、引き起こされていた生得的な
反応がだんだん少なくなる。 - 古典的条件づけ
刺激と刺激がある一定の関係で呈示されることによる学習。
生理学者イアン・パブロフ(ロシア 1849-1936): 条件反射という現象を発見。
- オペラント条件づけ
ある行動をした結果、何が起き、環境がどう変化したかで適応的に行動すること
を学習。
- 遊び
遊びをとおして「試行錯誤」による「オペラント条件づけ」によって学習。 - 模倣あるいは観察学習
同種の仲間(あるいは他種)の行動を見てそれをまねる。 - 洞察学習
自分が置かれた状況の中からいくつかの要素を選び出し、それを目的に合わせて
解決する。 - 刷り込み
刷り込みという学習は発生過程の一部であり、いつ学習するかだけでなく、何を学
習すべきかの「鋳型」も生得的に備わっている。
1)対象刷り込み
-ガンやカモ、ニワトリの雛など、孵化して最初に目にした動くものに刷り込まれ
その対象を親とみなし、そのあとを追いかけるようになる
-ツルの性的刷り込み
2)運動パターンの刷り込み
-小鳥のさえずり(→雛のときに親鳥など成鳥のさえずりをきいて学習する)
<一般学習と刷り込みの違い>
動物行動学者ローレンツ(オーストリア 1903-1989)は刷り込みを「学習の一特殊形態
である」とした。
- 刷り込みは、個体の生涯のうちのある限られた期間(「臨界期」あるいは「感受期」)
にしか起こらない - 刷り込みによって獲得された知識は生涯を通じて保たれる
- 刷り込みで学習するのは相手個体の特徴ではなく、その種に固有な特徴である
- 特定の反応のみがそれぞれ特定の対象に刷り込まれる
- 行動の対象の決定がその行動パターンが成熟する以前に起こる
(例:性的刷り込み) - 刷り込みは報酬(餌、親の体のぬくもりなど)がなくても起こる
以上
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